記憶から消えたアノ子は一体だれ?

記憶から消えたアノ子は一体だれ?

「うっそーーあんたアノ子にあだ名までつけたし、お別れの寄せ書きにピンクの 蛍光ペンで幸あれ!って思いっきり投げやりな字で 書いてたやん。覚えてないのおぉぉぉぉ。私ははっきり覚えているわ。なにこの子 もっとていねいに書いたったらええのにって。おもてたもん」 そんなあ。そんなあ。そんなことがあったなんて、全然知らない。うそみたいだった。からっきし覚えていないのだ。気味悪かった。 「あんたわたしと誰かとまちがっているんとちがう?」とたしかめてみた。 「絶対違う。そんなわけない」と友人は言いはるのだった。 その子の名前はもちろんその子の容姿の特徴その子にまつわる数々のエピソードなどなど全ての記憶がものの見事に私の記憶から消えてしまっているのだ。 もしかしたら、私の記憶の中から完全抹消された人々は、もっと他にもたくさんいるのかもしれない。いやきっといる。その人たちはもう二度と私の記憶の中からよみがえることはないのだ。その人との関り具合にももちろんよると思う。ただすれちがった人のことをいちいち鮮明に記憶している人はいないだろう。それは論外として。同じようにいろんな人の記憶の中から私という存在も消されていっているのだろうなあ。よく考えればあたりまえで自然なこと。かな? 私には、自分の記憶から完全抹消させてしまいたい存在がいる。それがかなえられたら私の心はどんなに軽やかで自由になれることだろうと思う。 けどなかなかうまくいかない。がんばって忘れたいと思う。でもがんばって忘れようとしている限りは忘れられないだろうなあ。

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